YAGOPIN雑録 世界あくせく紀行
 
 ● ヨーロッパ編・プロローグ
 
 

 ほんとに不思議なことなんだけど、僕はわくわくしていたんだ。

 そのとき久世くんは不安そうな顔をしていた。中山はやれやれという表情で、空港ターミナルの吹き抜けにうずを巻いたエスカレーターの方を眺めていた。手塚治虫の漫画に出てきそうな超未来的・・・というより実は1970年代的だったりするんだけど、そんなパリ・シャルル=ド=ゴール国際空港。ターンテーブルにいつまでも姿を見せない自分たちの荷物を待ち続けて、中山と久世くんのふたりは途方に暮れ、そして僕はこれから始まるトラブルに満ちた旅の予感に胸躍らせていた。

 それはほんとに不思議なことだった。旅は必ず安全で計画的で隙なく狂いなく行われなければならない、小心者にふさわしいそんな旅の哲学はこの旅行ではどこかに消え失せていた。海外旅行に慣れつつあったからだろうか、それともいっしょに旅するふたりに全幅の信頼があったからなのか。なんでだかはわからないけど、とにかく僕はかつてなかったほど楽天的だった。もともとあてのない旅なんだ。とことん翻弄されてみるのもいいじゃないか!

 
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