YAGOPIN雑録

世界あくせく紀行

ムグンファ号

● ??・??編・1


 九州支社に転勤になった同期から誘いがあり、9月の三連休に福岡へ遊びに行くことになった。せっかく九州まで行くのだから、ついでに遅い夏休みをとってどこかへ一人旅をしようかと地図を眺めていたところ、福岡からそれほど遠くないところに行ってみたい町を見つけた。そうだ、今回の旅の目的地はここにしよう。

日田・豆田町の街並み
日田・豆田町の街並み

 2001年9月19日9時40分、スカイマークSKY003便は羽田空港を離陸、11時20分に福岡空港へと到着した。交通機関の関係で今日はもうその目的地へは行けないので、昼食をとって、午後は大分県の日田市へ。日田は江戸時代、幕府直轄の天領として栄えたところで、その中心だった豆田町には当時の面影を残す街並みが残されている。さらに足を延ばして天ヶ瀬温泉の共同露天風呂に入ってから福岡へ戻る。

博多港にて
博多港にて

 福岡に住む先輩宅に宿泊し、翌朝は6時起きして目的地に向かう。福岡の中心・天神からバスに乗り、終点の博多港中央埠頭で船に乗り換える。8時45分出航。ビル群に囲まれた福岡ドームや福岡タワーが遠ざかってゆくとやがて窓一面を大海原が覆うようになる。その上には気持ちのよい青空が広がっているが、速力45ノット(時速80km)で高速航行中のため船室の外に出ることはできない。船は海面から2mほど浮き上がり、大量の水を吹き出しながら翼走する水中翼船である。揺れはそれほどなく、ちょうど高速バスに乗っているかのようだ。そろそろ海も見飽きたころ、左手に巨大な島が見え出した。長崎県の対馬である。船は速度を落とさずそのまま進んでいき、また海と空しか見えなくなった。いつの間にか携帯電話に「圏外」の表示が出ている。海と山に挟まれた大きな都市が見えてきた。水中翼船は速度を落としゆっくりと港に入っていく。11時40分、今回の一人旅の目的地である韓国第二の都市・釜山(プサン)に着いた。

 福岡と釜山の間の距離は213kmである。福岡と鹿児島の間が約300km、釜山とソウルの間が約440kmあることを考えるとその近さが分かる。飛行機なら1時間ほど、JR九州と韓国鉄道庁が共同運航している水中翼船『ビートル(JR運航)』『ジェビ(韓国鉄道庁運航)』でも3時間かからない。だからこそ今回のような、九州へ行くついでに韓国を訪れるという、国内・海外のハイブリッド旅行も可能なのだ。

 『ビートル』を降り、手荷物検査と入国審査を通って国際ターミナルの外へ出ると、いきなり目の前は釜山の町の中の大きな交差点だった。海外旅行は8回目だが、ひとりで海外に行ったのは実はこれが初めてである。飛行機で着けば、空港から町まで自分をその国の風景に順応させる「間」があるが、船の場合はこの「間」がないに等しい。とにかく方向を見定めようとリュックから地図を取り出す。信号が青になったので、とりあえず駅のほうに向かって歩くことにした。

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